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　植民地時代に日本に持ち出され、今なお日本各地に残る朝鮮白磁、高麗青磁、絵画など1700点を私財をはたいて買い戻し、1988年には京都に高麗美術館をオープンした。この話の主人公は在日韓国人実業家の故・鄭詔文（チョン・ジョムン）氏（1918－89）と、その息子で高麗美術館常務理事を務めるチョン・フィドゥ氏だ。

　父の死から26年が過ぎた今年、親子は文化財を救い出した英雄とその後継者としてスクリーンに登場する。鄭詔文氏の人生を描いたドキュメンタリー映画『鄭詔文の白い壺（つぼ）』が今年後半の公開に先立ち、21日に大阪・心斎橋で試写会が行われる。主催は韓国文化院。鄭詔文の息子で在日韓国人2世のチョン・フィドゥ氏もこの映画に何度も登場する。

　6日に京都の高麗美術館で取材に応じたチョン・フィドゥ氏は「国交正常化50年という節目であることを考えれば、この映画もより意義深く感じられるだろう」「6000万ウォン（約650万円）の製作費は、父と高麗美術館を愛してくれる韓国人と日本人250人が提供してくれた」と感慨深く語った。

　父の鄭詔文氏は幼いころ、両親と共に京都にやって来た。小学校を中退した直後から肉体労働を始めたが、30代で偶然出合った朝鮮白磁の美しさに魅せられ、後に事業で集めた資金を日本に流れた韓国文化財の買い戻しに使った。鄭詔文氏は小説家の司馬遼太郎、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹、在日韓国人小説家の金達寿（キム・ダルス）ら著名人らの賛同を得て、1969年から13年にわたり季刊誌『日本の中の朝鮮文化』を発行し続け、在日韓国人社会に誇りを持たせた。その後、1988年に韓国国内以外では唯一の韓国文化財専門展示館となる高麗美術館を設立し、その4カ月後にこの世を去った。これら全ての業績を見守ってきたのが、父とそっくりの風貌を持つ息子のチョン・フィドゥ氏だ。歴史研究で名高い奈良大学在学中は考古学を専攻したという。

　「美術館の庭に建てられた石塔は、1960年代に神戸市内の田畑にころがっていた石ころを組み立てたもの。父が『完全に組み立てて保存しないのなら、私に売ってほしい』と地主に要請し、当時2000万円で買い取った。1700点以上の所蔵品は全てこのような事情を抱えたものばかりだ。ここまで集められたのは幸いだったが、それでもまだ道は遠い。日本全国に散在する韓国文化財のうち、われわれが所蔵しているのはまだ1%にもならないからだ」

　チョン氏は文化財を申告せず個人所蔵している日本人たちに対しても「無条件で返還を求めているわけではない。その価値をしっかりと研究し、知ってもらうためにも、まずは現状の把握が必要だ。文化財の価値を共有する方法が何かあるはずだ」と呼び掛け、連絡を待っている。

　父の鄭詔文氏は日本に帰化せず、在日韓国人でありながらも韓国・北朝鮮籍を選択しないまま朝鮮籍として生きてきただけに、統一への思いも非常に強かった。鄭詔文氏は息を引き取る直前、息子に「25年後には統一が実現するから、その時になったら祖国に美術館を献納しなさい」という遺言を残した。チョン氏は「あれから26年過ぎたが遺言はまだ守れていない。しかし確信はある。多少遅れてはいるが、私の代には必ず祖国が統一し、父の願いが実現すると思う」と力強く述べた。

京都＝ 鄭智燮（チョン・ジソプ）記者
ソース：朝鮮日報　2015/02/15 07:06
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/02/14/2015021400720.html