あっ韓ニュース

　館内は小銃を携えたイスラエル兵、エチオピアから来た黒人のユダヤ人など、さまざまな観覧客で混雑していた。ホロコースト以前のユダヤ人の日常、家族の姿、ゲットー（ユダヤ人を強制的に収容した区域）での生活、ゲットーから「絶滅収容所」に移送される様子、収容所での悲惨な生活と死などを写真や映像、展示物で紹介している。

　見学路の最後には「名前の広間」がある。円すい形の天井にホロコーストの犠牲者たちの写真が飾られており、周囲の壁には彼らの個人情報を記したファイルがぎっしりと並べられている。「われわれは犠牲者たちの資料を最後の一つまで探し出し、彼らを絶対に忘れない」という説明文が目に留まった。

　特に目を引いたのは、ユダヤ人の虐殺を指示し、その命令に従ったドイツのナチ党（国家社会主義ドイツ労働者党）と軍人らの写真と、行跡に関する展示物だった。ホロコーストを経験した研究者、サイモン・ウィーゼンタール氏がアルゼンチンに逃亡した戦犯のアドルフ・アイヒマン氏を追い、イスラエルの法廷に立たせた過程も、独立したコーナーを設けて紹介している。加害者を記憶し、被害者を忘れないことが、ヤド・バシェムにとっての最優先事項であるように思えた。

　こうしたイスラエルの努力に比べ、韓国は「記憶力」が乏しい。日本政府が近ごろ、旧日本軍の慰安婦問題について「強制動員はなかった」とかたくなな態度を見せているのは、韓国の事実確認の努力が不十分だったせいでもある。「済州島で女性たちを慰安婦として強制連行した」という吉田清治氏（故人）の証言をそのまま記事にした朝日新聞が最近、誤報を認めたことで、日本の世論が激しく揺れているのも、一つの事例だ。慰安婦問題を訴えてきた日本国内の良心ある人々だけでなく、韓国も苦しい立場に立たされた。吉田証言に疑問を呈する声は韓国でも数年前から出ていたが「韓国がわざわざ先に虚偽であることを明らかにする必要があるのか」という思いから、事実の検証をおざなりにしてきたのだ。　

　被害者であるわれわれが加害者の行いをきちんと検証し、確認することを怠っていながら、加害者が進んで反省してくれるよう期待することはできない。徴用であろうと徴兵であろうと、また慰安婦問題であろうと、加害者と犠牲者を正しく突き止めなければ「記憶の戦争」で常に慌てふためくことになるだろう。犠牲者と加害者を正確に記憶することが「歴史戦争」で最も効果的な武器だということを、ヤド・バシェムは教えてくれる。

金基哲（キム・ギチョル）文化部次長
ソース：朝鮮日報　2014/12/11 10:56
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/12/11/2014121101389.html